絹谷 幸二

今年は以前に比べると、アフリカ諸国の作品が全体的に非常にカラフルになったように感じました。色鉛筆やクレヨン、絵の具で描いているものもありました。

子どもたちが素晴らしいと思うのは、人間と自然の両者は一体であるという哲学的なことを、身体や感覚で分かっているところでしょうか。大人は風景画や人物画を描くと、それぞれを分けて描きますが、今回のコンテストの「みんなの宝物、地球」というテーマの中で、多くの絵が自然と人間は別々のものではない、その自然はいずれ人間の身体の中に返ってくると、訴えている絵が多かったです。

私も富士山の絵を描きますが、例えば、富士山から流れる川の中には砂鉄が含まれており、その川はやがて海へ流れ、その砂鉄をプランクトンが食べ、プランクトンをエビや小魚などが食べ、それらを大きな魚が食べ、そしてその大きな魚を私たちが食べる。川から流れた砂鉄に含まれている鉄分が、我々の身体に入ってくるのです。
人間、あるいは動物が美しくあるためには、自然が美しくなければいけない。こういった両者の響き合いを、子どもたちの絵は感覚的に捕まえているのを教えてもらいました。

水があり、海がある。さまざまな動物がいて、私がいる。相反する概念は、それぞれ別々のものではなく、私たちもその一つのものの一部分だということ、宝物は自然もそうだけど、私たちも宝物なんだということを、子どもたちは身体や直感で分かっているのです。
大人になると分かれた考え方をするようになります。人間は人間、動物、自然、男女…本来は一つのものの一部分なのに、それを分けて考えることで、段々と層が生まれてくるのではないでしょうか。

審査会の今日はとても暑い日ですが、この暑い気温に負けない、非常に熱い作品が多かったです。子どもたちに負けないように、私も絵を描いていきたいと思います。

審査委員長
画家・東京芸術大学名誉教授
絹谷 幸二


絹谷幸二
1943年奈良県生まれ。1966年東京藝術大学絵画科油画卒業、1968年同大学院修了。芸大卒業後、1971年にイタリアへ留学、ヴェネツィアでアフレスコ古典画(フレスコ画)の技法を研究する。1974年、当時史上最年少で安井賞を受賞、若手洋画家として期待される。その後メキシコ留学などを経て、1993年東京芸術大学教授に就任、後進を育てる。2000年に日本藝術院会員となる。現在は、東京芸術大学名誉教授に就任。代表作に長野冬季オリンピック公式ポスター等多数。

木村 泰政

今年もJQA地球環境世界児童画コンテストの最終審査会に参加させていただき光栄に存じます。また世界96カ国から17,000点以上の作品が寄せられ、前回より多くの子どもたちがコンテストに関心を寄せてくれたことを大変に嬉しく思っております。世界各地で紛争や大規模な災害に直面し困難な状況にいる国々の子どもたちからもたくさんの作品が寄せられました。

今年も子どもたちの感受性豊かな表現力に驚かされる作品ばかりでした。「みんなの宝物、地球」というテーマに対し、大切な人、動物、自然など絵の対象を1つに絞るのではなく、子どもたちの作品では、自然や人、動物の共生が色彩豊かに描かれているのがとても印象的でした。

子どもたちはこのコンテストに参加することによって、今自分たちの周りにある環境がどういう状況であるのか現状を見直し、またどのような環境を理想とするのか真剣に向き合ってくれたことと思います。そして子どもたちの作品を通して私たち大人は、未来を担う子どもたちが何を考え、何を望んでいるのかメッセージを受け取りました。

美しい緑豊かな自然の中に人が描かれる―これこそ子どもたちが大切に想う地球の姿であり、希望する未来である、それは国や文化を超えて共通しているように感じました。地球温暖化や水質汚染、大気汚染など課題は山のようにあります。しかし、子どもたちのメッセージを真摯に受け止め、すべての子どもたちの権利が守られる世界を実現するべく努力していきたいと思います。

最後になりましたが、作品を応募してくださったすべての子どもたちに感謝申し上げるとともに、みなさんの素晴らしい感性が今後も豊かに成長されることを願っています。

UNICEF(国連児童基金)東京事務所
代表  木村 泰政

延藤 安弘

自然・都市・人間が内から豊かにしあう関係へ

共感(思いやり)こそがすべての始まりである。コンテストに寄せられた子どもの作品には、「みんなの宝物、地球」への思いやりが多面的に表現されている。

今年高く評価された台湾からの作品のひとつには、際立った特徴がある。パリのエッフェル塔も、ニューヨークのクライスラービルも、台湾の歴史的社寺に上がる石段も、山々の連なる緑も、身近な場所の花々も、有機的生命体として鳥の体内に!そこには各国・地域を運営するかのような、それぞれの船を漕ぐ人々、それら全体を支えている大自然の中の生き物たち――自然・都市・人間が互いに内から豊かにしあう関係を紡ぐ見事なイメージ表現。

いまひとつの注目は、原風景という子ども時代の思い出に残る環境によって、子どもの感受性が育まれることを表わす日本からの作品。レンゲ畑は美の面的拡がりと、ひとつひとつの花の細部に宿るイノチと、そこに戯れる生き物たちの躍動感の総合。総合的生命環境にジカに触れる喜びによって、地球環境への共感がいっそう高められていく。

生命・環境・人間の生き生きした関係への共感の表現としての本絵画コンテストが、さらなる持続と発展をとげることを期待する。

建築家・NPO法人まちの縁側育くみ隊
代表理事  延藤 安弘

辰巳 菊子

この時期、世界の国々から届く子どもたちの絵を見せていただけるのが楽しみで心がワクワクします。一方、多くの子どもたちが絵画を通して送ってくれたメッセージに対し、この感動をどのように言葉にしようかといつも悩みます。今回のテーマは「みんなの宝物、地球」です。「宝物」は誰にとってもとても魅惑的であり、子どもたちはこの言葉から、心躍る発想を生み出してくれました。カラフルな子どもたちの世界はとても楽しく、そして、さまざまな「宝物」があることに気づかせてくれました。

いつも多くの作品を前にして、子どもたちがこれを描いている様子を想像しています。どのような場所で、どのような人々と一緒に、どのような姿勢で、どんなことを思いながら描いているのかなぁなんて。今年は、世界96カ国・地域からの応募がありました。国名を見ては、世界地図を参照し、その国の暮らしなどを絵から想像させてもらい、まさに居ながらの世界旅行です。子どもたちが何時間も描くことに集中出来る環境こそ「宝物」。絵さえ描けない子ども達が世界には多く取り残されていることも常に忘れてはならないと思っています。

子どもたちの絵からは声が聞こえます。子どもたちの発する声を引き出すこのような機会はとても貴重です。昨年末に環境省主催の「地球温暖化防止活動 環境大臣表彰」を受賞されたことは、審査の一端に関わらせていただいているものとしても何よりの喜びであり、遠い世界から応募をして下さった方々、そしてその機会を作って下さった主催者に深く感謝しています。

公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会
常任顧問  辰巳 菊子